原生生物の世界Ⅱ その成立と構造
The protist world II-its formation and structure


丸山 晃

 序‐ロココの開花、揺らぐ生命の樹

  生物群の発祥、分岐と派生の系譜をたどる生命樹、2013年、トム・ウイリアムスの「2ステム樹」、基部に「バクテリア、 アーキアとその一分枝、ユーカリア」、各々真正細菌、古細菌と真核生物は、二樹幹、一分枝に三段樹冠が展開する。
  17年、トム・キャバリエ‐スミスの「ユーカリア・ブランチ樹」は、「捕食細胞」のエクスバータとその一分枝、 陸上植物を擁するディアフォレティケス、「仮足分化細胞」のサルコゾアとその二分枝のアメーボゾアと人類を頂く オピストコンタ(前2群はアモルファと呼称)が樹冠を拡げる。
  ここに提示の二分岐するクレード、ステム/ブランチ(幹)、ノード(分岐点)とアポモルフィー(派生形質)の前線は、 不確定、遠い祖先の深い分岐や遠い群間を水平転移する遺伝子、多様な未知群に阻まれている。
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  生命樹は、古代、ギリシャのアリストテレスの二大別「動物と植物」の認知、 15中‐17中世紀、大航海時代の 西欧外から動植物の知識移入、17世紀、レーウェンフックの光学顕微鏡期、「滴虫」のインフゾリア、18世紀、神学下、 リンネの人為的な階層分類を経て、19世紀、当時異端のダーウィンの「種の起源」の自然選択説を受け、ポスト・ダー ウィン期、66年、エルンスト・ヘッケルの「原生生物」のプロチスタ、プランタとアニマリアの「3ステム樹」が顕 在化する。
  分類の記述、原生動物(384-322BC-1989)、細菌(1786-2016年)、粘菌(1801-1970年)、菌類(1719-1973年)、 藻類(1753-1995年)がされる。
  1872-6年には「チャレンジャー号探検航海」の海洋種探索、20世紀前期、01-47年には、動物、植物、細菌の各 国際命名規約が発効する。
  60年代、電顕期、上位対立群、原核と「核形成とミトコンドリアの統合する」真核生物の設置、プロチスタから モネラ(=原核生物)、プランタから菌類分離の「5界樹」への再編がされる。
  レヴィンらの原生動物学会の「原生動物新体系」(1980)など、肉質(葉・糸状仮足)や鞭毛虫類(植・動物性)、 胞子虫類の形質集合群、主に微細構造、分子種型の表現形質による伝統的分類は解体、新システムに配分・配置、終 止する。
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  1953年、黎明の予兆、ワトソン‐クリックの遺伝物質、優美で繊細な「DNA 二重らせん構造」と58年、クリッ クの「セントラル・ドグマ」の開花は、67年、「 徒花」リン・マーギュリスの「細胞内共生説」、ミトコンドリア(85 年、元始はα-プロテオバクテリア)と葉緑体(後述)を生起する真核細胞と遭遇、やがて、77-90年、「情報高分子」 による、カール・ウーズのバクテリア、アーキアとユーカリアの「3ドメイン樹」を現出する。
  「2ステム樹」、84年、ジェームズ・レイク創始の「エオサイト説」は、「3ドメイン樹」と並立、08年、復活、今、 遺伝子転移が普遍的に起こる、ユーカリアの祖先(LECA)、ノード探索に向けられている。
  80-90年代の広範な細菌、5群の単一遺伝子樹、古細菌、緑・紅・藍色、グラム陽性細菌を改定、06年、フランチェスカ・ シカレリーの23群の多遺伝子樹(含む古細菌3群)、「グラム陽性」のフィルミクテスや「グラム陰性」の藍色細菌、プロテオバクテリアは、「不確定な」深い根と対面、11年には、「アーキアの祖先」は、グラム陰性を基部にグラム 陽性菌、1963年、オパーリンの「生命の起源」のかかえる「共通祖先(LUCA)」は好熱菌に止まっている。
  真核生物は、80年代後期の「クラウン樹」(ノードから放射)を脱出、21世紀、数‐多遺伝子の6-7超群の「ユー カリア・ブランチ樹」が流布、「バイコント」、2鞭毛細胞のエクスカバータ、ディアフォレティケス、サルコゾアと「ユ ニコント」のアモルファの9超群固有の鞭毛細胞型で区分される。
  ディアフォレティケスは、プランタ05年改名のアーケプラチスダが「(1)藍色細菌獲得の一次共生」の紅藻や緑 色植物(緑色藻とシャジク藻植物)、ストラメノパイル(S)、アルベオラータ(A)とハクロビア(H)が「(2)紅藻 獲得の二次共生」、頂点群に褐色藻(褐藻や珪藻(S)、渦鞭毛藻(A)、クリプト藻やハプト藻(H))、「主に糸状仮足」 のリザリア(前2群とSARを構成)が「(3)緑色藻獲得の二次共生」、頂点に放散虫類(有孔虫類やアカンタリア、 ポリキスチナ)、またアメーボゾアは「主に葉状仮足」、頂点に粘菌類が出現する。(3)の水平移動は、エクスカバー タ分岐群のユーグレノゾアにも及ぶ。この間、バージェイズ(細菌、84-12年)、アデルらの原生生物学会・マニュ アル(真核生物、05、12年)が発行される。また、環境DNAシーケンスによる未知群の探索がされる。
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  二大樹冠、アーケプラチスダとオピストコンタのアウトグループ、共通祖先群、前述超群は各々頂点群に停まる。
  淡水域シャジク藻植物の輪藻を外れ、接合藻発祥の陸上植物(06年提起)は、ノード、小葉、大葉、種子で画する、 06-10年設置の、(1) 配偶体優位のコケ植物の、苔類と残余群(蘚類とツノゴケ類)と維管束植物、(2)-(3) 胞子 体優位の維管束植物の、小(主脈のみ、ヒカゲノカズラ)・大葉(葉隙を生じる葉、シダ・種子植物)を分岐する。
  オピストコンタは、06年、「単‐多細胞群」の菌類(ツボカビ、ケカビに次ぎ、頂点に二核菌類)と後生動物が設置、 1866年、ヘッケルの「ガストレア説」 、ノード、「単細胞の襟鞭毛虫類の襟鞭毛継承の海綿動物(08年設置)、2胚 葉の放射相称に次ぐ3胚葉の左右相称」は、16年、ジョアンナ・キャノンの新設群「無体腔、上皮消化管に単一開口」 の珍無腸動物と「有体腔、排出器官系、腎管発達」のネフロゾアに二分、後群に後口(脊索や棘皮動物)と前口動物(脱 皮と08年設置の螺旋卵割動物)が配置される。
  「ヒトゲノム計画」は、1953年開始、全塩基シ―ケンス解読、03年完了、ゲノム医療等の実現・発展に向け環境 整備が進行、が視界は不透明だ。


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